数あるマーケティング法の中で「ダイレクトマーケティング」という言葉を聞いたことはありませんか?
ダイレクトマーケティングは私たちの生活と密接に関わっていますが、それはいったいどんなものなのでしょうか?
今回はダイレクトマーケティングについて、わかりやすく解説していきたいと思います!
この記事のポイントまとめ
- ダイレクトマーケティングは絞ったターゲットの一人ひとりにアプローチするマーケティング法
- ダイレクトマーケティングは企画などに時間がかかることもあるが、PDCAが回しやすく、高い費用対効果を持ち、顧客のニーズなどを把握できる
- 顧客の心理を想定すると効果的なダイレクトマーケティングができる
まず、「マーケティング」って何だろう?
マーケティングとは、企業が顧客に対して商品やサービスを効果的に提供するための仕組みづくりのことです。
ダイレクトマーケティングという概念は、1961年にアメリカのレスター・ワンダーマンによって提唱され、広められました。
それまでは不特定多数に向けたマスマーケティングが主流でしたが、現在はピンポイントの顧客をターゲットにしたダイレクトマーケティングへと移行しています。
では、「ダイレクトマーケティング」とは?
「ダイレクトマーケティング」と聞いて、皆さんはどのようなマーケティング法を思い浮かべますか?
「ダイレクトだから、店頭並べたりんごを直接販売することとか?」
そう思う方もいるでしょう。
しかし、そうではないのです!
ダイレクトマーケティングというマーケティング法は、顧客層を絞り売り手と顧客が直接的なコミュニケーションを取ります。
ですがこの例だと、りんごを作った農家と直接コミュニケーションは取れません。
売り手と顧客による双方向のマーケティングといわれるダイレクトマーケティング。
次はそんなマーケティング法の特徴を紹介していきましょう!
ダイレクトマーケティングについて理解を深める5つの特徴
ダイレクトマーケティングには5つの特徴があります。
① Direct(ダイレクト):売り手が顧客に直接アプローチできる
ダイレクトマーケティングの最大の特徴は、売り手が顧客に直接働きかけることです。
顧客の購買に関連する情報(購買履歴や購買準備行動情報など)を把握できるので、最適なタイミングでキャンペーン・商品をアプローチできます。
②One to One(ワントゥーワン):顧客ごとに情報をカスタマイズできる
ダイレクトマーケティングは、顧客との間で直接のコミュニケーションを行うことが可能です。
それによって、個人に合わせてカスタマイズしてアプローチをすることができます。
いわゆるOne to Oneコミュニケーションが可能なのです。
例えばDM(ダイレクトメール)であれば、一人ひとり違うキャッチコピーやデザインにするなど顧客ごとに合わせる、いわゆるパーソナライズができます。
③Relationship(リレーションシップ):顧客と継続的な関係を築くことができる
顧客と継続的に良い関係性を築くことは、商品を繰り返し購入してくれるリピーターを得ることに繋がります。
顧客のデータベースを活用して、彼らと良い関係を築いていくことが重要です。
また、顧客の中には長期的に商品をリピートで購入してくれるロイヤル顧客やインフルエンサーが生まれる可能性もあります。
④Interactive(インタラクティブ):顧客と双方向でコミュニケーションが図れる
ダイレクトマーケティングでのコミュニケーションは、売り手から顧客への一方通行のものではありません。
顧客の反応や情報などを収集して、売り手がさらにそれを利用して情報を発信していきます。
例えば通販サイトを使用した顧客に対しては、IT技術によって以前に購入した商品や関連商品などをおすすめできます。
一方的に商品を送り付けるのではなく、顧客が購入したいと思うようなものを紹介することは信頼度の向上にも繋がります。
また、双方向でのコミュニケーションが成立することを、2WAYコミュニケーションといいます。
⑤Accountability(アカウンタビリティー):費用対効果が適切かを把握し説明できる
顧客に対して適正なダイレクトマーケティングが行われたか、コストは適切なのか、目標は達成したのか。
それらを明確に把握して説明できると、次のダイレクトマーケティングに繋がります。
戦略などを考えて、費用対効果をチェックしながら運用しましょう。
ダイレクトマーケティングを構成する2つの領域とは
ダイレクトマーケティングは、2つの領域で構成されています。
①レスポンス広告でターゲットの中から、顧客獲得(アクイジション)
幅広いターゲットの中から見込み客・顧客を獲得すること。
店舗に頼らず広告コミュニケーションのみで行うので、行動喚起となる「レスポンス広告」が重要となります。
②直接的なコミュニケーションを行い、顧客活性化(リテンション)
顧客に長期かつ多量の購買などを働きかけて、顧客1人が売り手にもたらす価値・利益の総量「顧客生涯価値(Life Time Value:LTV)」を高めること。
一般的に、この領域は「顧客関係管理(Customer Relationship Management:CRM)」と呼ばれており、顧客とのコミュニケーションによって販売を促進することが中心です。
商品を購入した顧客に、リピート購入してもらうアップセル・商品を購入した顧客に、関連商品も購入してもらうクロスセルを実施し、他にもDM、電話、メールマガジン、SNSなどで働きかけ、リピーターの顧客を増やしていきます。
ダイレクトマーケティング領域の図
(出典:2018年 凸版印刷株式会社出版 一般社団法人日本ダイレクトメール協会『新DMの教科書』P27「DMマーケティングエキスパート」セミナーを元に作成)
身近で見られるダイレクトマーケティングの種類
しかし、皆さんの身近にあるダイレクトマーケティングの具体例がわからないと、まだしっくりこないのではないでしょうか。
では、ダイレクトマーケティングの例を解説していきましょう。
ダイレクトマーケティングの代表的な5種類とは
実は、私たちの身近にはダイレクトマーケティングを利用しているものがたくさんあります。
以下のものが、ダイレクトマーケティングの代表的な5つの種類です。
①スピーディーにコミュニケーションできる「電話(テレマーケティング)」
顧客と電話でコミュニケーションを取り、キャンペーンや商品購入、資料請求を促進します。
他のダイレクトマーケティングと比べて、スピーディーに行えることが特徴です。
事前に顧客のターゲットを絞って電話をするアウトバウンドと、顧客からの問い合わせに対応するインバウンドがあります。
②直接手元に届けることで記憶に残りやすい「DM(ダイレクトメール)」
※SNS(Twitterなど)で用いられる、個人アカウントにメッセージを送るDMの正式名称は「ダイレクトメッセージ」です。
DMとは、売り手から個々人宛に直接送られる、商品案内やキャンペーンに関する印刷物・広告のことです。
直接紙として手元に届いて手で触れることができます。
顧客の記憶に残りやすく、さらに作り方次第で大きなインパクトを与えることが可能です。
DMについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
③低コストで配信できて顧客の反応を測定しやすい「メールマガジン」
メールマガジンは人件費・紙代・印刷代があまりかからず比較的低コストで配信が可能です。
また、メールマガジンによっては記載されたURLへ誘導することで、顧客の反応を測定しやすいという効果があります。
開封率・クリック率を分析すると、より顧客のニーズに応えられるようになります。
④ユーザーが閲覧した商品と関連したものを紹介できる「ECサイト」
ECサイトとは、web上で買い物ができる通販サイトのことです。
ユーザーが閲覧した商品のデータから、商品と関連したものや興味を持ちそうなものの紹介ができます。
ECサイトは通信販売業界にて、売上高がどんどん伸びています。
通信販売業界については、ダイレクトマーケティングの代表例として後述します。
⑤顧客との距離が近く情報の拡散が期待できる「SNS」
若年層がよく使用している、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNS。
SNSは顧客との距離が近く、使いこなせば強い拡散力を持ちます。
公式SNSアカウントを作って情報を発信し、フォロワー数を増やし拡散していきましょう。
ダイレクトマーケティングの典型的なビジネスモデルは、通信販売業界!
色々なダイレクトマーケティングの種類について挙げましたが、その典型的なビジネスモデルとはどういったものでしょうか。
代表例としては、通信販売業界が挙げられます。
まずはマスメディア(TVや新聞など)やweb広告で見込み客を獲得。
次にその見込み客にDMなどを送り本商品購入に繋げ、リピート購入をしてもらうようにアプローチ(アップセル)します。
商品を購入した顧客に、リピート購入してもらう→さらに高額の商品を購入してもらうためのアプローチ。
【例】
USBを購入していた顧客に、より大容量で高額のUSBを勧める
それに加えて、購入商品の拡大(クロスセル)を促進します。
顧客に、関連商品も購入してもらうためのアプローチ。
【例】
スマホを購入した顧客に、保護フィルムやスマホカバーなどの購入を勧め
さらにクーポン券・プレゼント・友人紹介キャンペーンなどのアプローチをして、顧客満足度が高く長期的に商品をリピートで購入してくれるロイヤル顧客への深化を目指します。
ダイレクトマーケティングを活用する際のメリット3つ
次に、ダイレクトマーケティングのメリットを解説します。
①PDCAを回すことで、ターゲットのニーズを取り入れた商品開発が行いやすい
ダイレクトマーケティングのメリットの一つは、PDCAを回しやすいことです。
Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことで、業務を継続的に改善していきます。
ターゲットのニーズを収集し、顧客の反応などのデータを集計して、新商品の開発がしやすくなり、そしてその商品が売れて、といったサイクルが出来上がるのです。
②リピート顧客やロイヤル顧客を獲得でき、安定した収入を得られる可能性がある
ダイレクトマーケティングは、比較的安定した収入を得られる可能性があります。
顧客満足度が高く長期的に商品を繰り返し購入してくれるリピート顧客、またそれに加えて口コミを拡散・友人紹介などをしてくれて簡単に他社へ遷移しないロイヤル顧客を獲得し、顧客の満足度の向上や利益に繋げます。
③リピート顧客やロイヤル顧客を獲得でき、安定した収入を得られる可能性がある
顧客の反応や情報などを収集することで、そのニーズを把握できます。
そうすることで、One to Oneコミュニケーションが可能となり、より良い結果に繋がるでしょう。
しかしこれらのメリットの反面、共通するデメリットもあります。
PDCAが軌道に乗るまでの時間、リピート顧客やロイヤル顧客の獲得に費やす月日、顧客の情報収集などに必要な下準備など、どれも時間が必要となってしまうのです。
年々存在感が高まっているダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングは、年々存在感を高めていっています。
以下に通信販売業界の例を挙げて解説していきましょう。
以下のグラフは、2010~2019年における通信販売売上高のグラフです。
売上高が安定して伸びていることがわかります。
『公益社団法人 日本通信販売協会』を元に作成
(https://www.jadma.or.jp/pdf/2020/20200820press2019marketsize.pdf)
通信販売業界はダイレクトマーケティングの代表ともいわれており、消費者の購買経路として存在感を高め続けています。
ダイレクトマーケティングのさらなる手法と可能性に注目しよう!
ダイレクトマーケティングは、絞ったターゲットの一人ひとりにアプローチするマーケティング法です。
企画などに時間がかかることもありますが、PDCAを回しやすく、高い費用対効果を持ち、顧客のニーズなどを把握できます。
ダイレクトマーケティングを用いる業態は今後も売り上げを伸ばしていくでしょう。
通信販売業界が台頭してきたように、時代が進むにつれてまた新たなダイレクトマーケティング手法が力を持つ可能性もあります。
今後もダイレクトマーケティングから目が離せませんね。