販売促進の効果を知るには?3つの“率”で理解する、測定に必要な要素について

販売促進の効果測定とは、実施した施策による効果を分析することです。効果測定を正しく行うと、「より良い施策を打ち出せる」「費用対効果を把握できて不要な予算をカットできる」などのメリットが得られます。

効果を測るためには、「販売促進費率・反応率・コンバージョン率」の意味を理解しておく必要があります。本記事では、効果測定の重要性や、効果測定に必要な3つの要素について解説します。

この記事のポイントまとめ

  • 販売促進の効果を測定することで、施策の改善・適切な予算設定ができる
  • 効果測定に必要な要素は「販売促進費率・反応率・コンバージョン率」の3つ
  • 過去の実績と比較するために、年間計画を策定する際に目標を数値化しておく
  • 販売促進の効果的な手法は、達成したい目的によって異なる

はじめに

販売促進は、「施策を企画立案し、実施すれば完了」というものではありません。さまざまな手法を用いて販売促進を実施したあとは、「効果測定」を行うことが重要です。

効果測定の方法は主に以下の2つです。いずれも、アメリカの経学者かつマーケティング分野の第一人者であるコトラーが提案したものです。

  • コミュニケーションの効果
  • 売上への効果

「コミュニケーション効果」は「コピーテスト」とも呼ばれ、消費者の行動から効果を分析する方法です。ネットによるオンライン販促ではクリック数や問い合わせ数など、リアルでの販促ではクーポンやチラシの配布枚数に対する来場者の増減などを指標にします。

「売上への効果」は、販売促進による売上の変化を分析することです。施策の実施前・実施後の売上を比較し、売上に対して販売促進がどれほどの影響を及ぼしたのかを調べます。

これらの方法を用いて効果測定を行う際は、マーケティング的な視点を養い、効果測定に必要な要素を把握しましょう。本記事を通して、効果測定すべき理由や、効果測定に必要な3つの「率」について理解を深めましょう。

販売促進の効果を測るべき理由とは

販売促進の効果を測ることが重要な理由は、主に以下の2つです。

  • より良い販売促進につなげる
  • 不要な施策に予算を投じることを防ぐ

実施した施策の効果を測ることで、「なぜ効果を得られなかったのか」「ユーザー層によって反応に違いがあるか」などを分析できます。施策がうまくいかなかった原因を理解できれば、次回の販売促進の改善に役立てられるでしょう。

例えば、思っていたような反応を得られなかったユーザー層がいれば、次回の施策からはターゲットにしないという選択肢も考えられます。どのユーザー層からも期待通りの反応がなかった場合は、アンケートなどを行ってユーザーへの理解を深める必要があるでしょう。

また、販売促進の効果測定は費用対効果の把握にも有効です。「実施している施策でどのくらいの利益が見込めるか」をつかめれば、必要な施策・不要な施策を選別でき、不要な施策に予算を投じることを予防できます。

1.販売促進費率

「販売促進費率」とは、売上に対する販売促進費の割合を指します。販売促進の施策を実施する際は、適切な予算を設定したうえで、コストに対してどれくらいの利益があったのかを把握することが肝要です。

販売促進費率は、適切な予算を決めるために用いられる指標です。販売促進費率の意味を理解しておくと、同業他社の販売促進費率と比較することで、自社の販売促進に対するコストが適正かどうかを検討できるでしょう。

ここでは、販売促進費率や予算設定の考え方、コストに対する利益を知るための「費用対効果」について解説します。

販促費の目安は、売上の3~5%が一般的

販売促進費率の一般的な目安は3〜5%です。つまり、予算を組む際は販促費が売上の3〜5%に収まるように設定するのが基本です。

ただし、3〜5%はあくまで一般的な目安であり、業種によって適正な割合は異なります。参考として、業種ごとの販売促進費率の目安を見ていきましょう。

  • 自動車:1〜2%
  • 小売:3%
  • 教育:3%
  • 金融・不動産:5%
  • 外食・飲食物:5%
  • 化粧品・健康食品:10%
  • 通販:15〜20%

なお、新商品や新しいサービス、新規事業の場合は売上が立っていないケースが多いことから、販促費の割合は少なくとも10%以上にすべきとされています。

プロモーションのための予算設定がポイント

販売促進によって多くのユーザーに自社製品を知ってもらえたとしても、売上を上回るほどの販促費を投じていれば、赤字に陥ってしまいます。赤字を回避するために、自社製品のプロモーションを行う際は適切な予算を設定することが重要です。

販促費の予算設定では、販売促進費率から予算を決める方法があります。例えば、月間売上200万円の商品の販促費について考えてみましょう。販売促進費率を一般的な目安である3〜5%に設定すると、販促費の適正な範囲は6〜10万円です。

または、売上を試算したうえで原価や経費の見積もりを算出し、販促費に充てる割合を決める方法もあります。この場合は、決定した予算と販売促進費率を照らし合わせて、適正な範囲内であるかを確認しましょう。

これらの方法で設定した販売促進費の予算が適切であるかを考える際は、同業他社の販売促進費率と比較するのが有効です。

適正な費用対効果を把握することが重要

販売促進を実施する際は、施策に投じた予算に対するリターンを把握しなければいけません。コストに対する実際の売上は、「費用対効果」や「コストパフォーマンス」と呼ばれます。

費用対効果を測定する方法は、主に以下の2つです。

  1. CPA(Cost Per Action)
  2. ROI(Return On Investment)

「CPA(Cost Per Action)」は「顧客獲得単価」ともいい、1人のユーザーを獲得するためにかかったコストを表します。「販促費÷コンバージョン数」で求められ、数値が低いほど費用対効果が高いと考えられます。

「ROI(Return On Investment)」は、販促費に対する利益を評価するための指標です。直訳すると「投資に対するリターン」を指し、「投資利益率」とも呼ばれます。

ROIを求める際の計算式は、「利益(売上から売上原価と諸経費を差し引いたもの)÷販促コスト×100」です。ROIの数値が高いほど、費用対効果も高いといえます。

費用対効果はこれらの方法を用いることで測定できますが、「あくまで結果を分析するものである」ことを念頭に置くべきです。言い換えると、費用対効果の高さだけに注目していては、施策が成功したのか、失敗したのかは測れません。

重要なポイントは、販売促進の目的を明確にし、目的に対する費用対効果の高さを把握することです。例えば、客数を上げるための施策を行ったにもかかわらず、客数を維持したまま客単価が上昇したと仮定しましょう。

この場合に着目すべきは、「客単価の上昇による売上アップ」ではなく、「客数アップを目的とした施策の失敗」です。費用対効果を考える際は、目的と手段を切り離さず、「何のために実施した施策なのか」を意識する必要があるでしょう。

2.反応率

「反応率」は、販売促進の効果測定に関連する用語の一つです。「反響率」や「レスポンス率」とも言い換えられ、実施した施策に対する反応の割合を指します。反応には、問い合わせや資料請求、来店などが挙げられます。

反応率を測定すると、「良い反応があったエリアはどこか」「反応率が高い時期はいつか」などを分析できるでしょう。ここでは、反応率の計算式やデータを取る際のポイントなどを解説します。

反応率=反応数÷販促実績数×100

反応率を求める際の計算式は「反応数÷販促実績数×100」です。エリアAとエリアBにチラシを配布したと仮定し、具体的な計算方法を確認してみましょう。

配布した地域配布枚数反応数
エリアA1,000枚70件
エリアB1,200枚60件

エリアAの反応率は「70÷1,000×100=7%」、エリアBの反応率は「60÷1,200×100=5%」です。エリアBに比べて、エリアAの反応率が2%高いことが読み取れます。

なお、チラシを配布した際の一般的な反応率の目安は以下のとおりです。

  • 新聞折込チラシ:0.03%〜
  • ポスティング:0.03%〜
  • 同封同梱広告:0.1%〜

実施エリアや時期ごとのデータ取りがポイント

反応率を測定する際は、エリアや時期ごとにデータを取りましょう。反応率は、施策を実施するエリアや時期などの影響を受けるものです。例えば、前項で紹介した仮定のように、2つのエリアで反応率に差が出ることは珍しくありません。

エリアや時期ごとに反応率を分析することで、「反応が良かった地域はどこか」「施策を実施すべき時期はいつか」などを特定できるでしょう。

「反応」をわかりやすく測定する工夫が重要

反応率を把握するためには、反応をわかりやすく測定する工夫を取り入れるのがポイントです。例えば、配布するチラシにクーポンをつけるのも有効な方法です。クーポンを利用した人の数をカウントすれば、反応率を簡単に調べられるでしょう。

クーポンにナンバリングしたり、配布するエリアごとにチラシの色を変えたりすると、ターゲット層やエリア別の反応率も算出しやすくなります。

その他には、配布したチラシへのリアクション専用の電話番号やランディングページを設置するのもおすすめです。

3.コンバージョン率

「コンバージョン率」とは、販売促進を行う際に設定した目標を達成した割合です。「コンパージョンレート」とも呼ばれ、目標に対して施策がどれくらい反映しているかを分析する際に用いられます。

コンバージョン率を理解するためには、コンバージョン設定や測定項目の決め方に対する知識も欠かせません。ここでは、コンバージョン率の求め方やコンバージョン設定のポイントなどを解説します。

コンバージョン率=目標達成数÷販促実績数×100

コンバージョン率は、「目標達成数÷販促実績数×100」によって求められます。商品購入を目標にするのが一般的ですが、母数に用いられる数字はさまざまです。

例えば、チラシの配布枚数に対するコンバージョン率の計算式は、「目標達成数÷チラシの配布枚数×100」です。また、来店数に対するコンバージョン率は「目標達成数÷来店数×100」によって算出できます。

最終的な成果(コンバージョン)の設定がポイント

販売促進の施策を考えるうえでは、最終的な成果(コンバージョン)を設定することが重要です。コンバージョンを設定する際は、以下の手法を用いるケースが多いです。

  1. ロジックツリー
  2. マイクロコンバージョン

ロジックツリーでは、コンバージョンを実現するために必要な要素を洗い出し、論理的な構造を構築します。例えば、売上アップというコンバージョンに必要な要素を考える際は、顧客数と客単価の2つに分解できるでしょう。

「顧客数は新規顧客と既存顧客に分解できる。さらに新規顧客の獲得に必要な要素は……」という風に、要素を深掘りしてツリー化します。

マイクロコンバージョンは、コンバージョンの成果を過程ごとに追求する仕組みです。例えば、「1.チラシ配布」「2.来店」「3.購入」「4.再来店」など、スタートからゴールに至るまでの過程を細分化して成果を調べます。

最終的な成果をきちんと設定しておくことには、施策の効果を測定しやすくなるメリットがあります。より良い販売促進につなげるためにも、目標設定をしっかりと行いましょう。

コンバージョンの定義によって測定項目を決めることが重要

コンバージョンの定義は、業種などによって異なります。効果測定を行う際は、コンバージョンの定義に応じて測定項目を検討しましょう。以下で業種別のコンバージョンの例をご紹介します。

業種コンバージョンの例
保険会社資料請求、見積もり依頼
ECサイト(通販など)​​商品購入、会員登録
自動車販売カタログ請求
学習塾体験授業の申し込み
美容品・健康食品商品購入、試供品の問い合わせ
不動産問い合わせ、内覧会の申し込み
求人サイト会員登録
宿泊施設宿泊予約

正確な測定には実施前との数値比較が重要

販売促進の効果を正確に測定するためには、施策の実施前・実施後の数値を比較することが重要です。数値比較のデータを蓄積していくことで、今後の販売促進の改善につながるヒントが得られます。

なお、過去の実績との数値比較を効率良く行うためには、年間計画の策定が有効です。年間の見通しを月間計画に落とし込み、具体的な目標を数値化しましょう。年単位で立てた計画を月単位に細分化することで、年度内の前年同期比を把握しやすくなります。

販売促進に効果のある手法とは

販売促進にはさまざまな手法があり、目的に応じて効果的な施策は異なります。ここでは、目的ごとの効果的な手法の例を以下にまとめました。「何のために販売促進を実施するのか」を前提に、自社に合う販売促進の施策を考えてみてください。

【(1)自社の商品・サービスなどの認知度を向上させたい】

手法狙える効果具体的な方法
オンライン広告・不特定多数にリーチできる ・コストの最適化が期待できる・ホームページの作成 ・インターネット広告の掲載 など
オフライン広告・特定のエリアに効率良くリーチできる ・日常生活の中で目に入りやすい・チラシ配布 ・新聞や雑誌への広告出稿 ・看板の設置 など

【(2)商品の購入や消費につなげたい】

手法狙える効果
プレミアム手法「お得感」によって購入意欲のハードルが下がりやすい
サンプリング見込み客への購入を促す

【(3)顧客にリピートしてもらいたい】

手法狙える効果
クーポン配布顧客の購買意欲につなげやすい
ポイント制度の導入再来店してもらいやすくなり、自社への定着が期待できる

まとめ

販売促進の施策で重要なのは、それがもたらした効果を適切に記録・分析することです。

そのデータに基づいて改善点や強化策を打ち出し、次回の販促に反映させます。

これを繰り返すことでいわば販促活動のバージョンアップが可能となり、より有効な施策として完成されていくでしょう。

こうした効果測定のためにも、まずはこれまで見てきた「3つの“率”」を継続してモニターし、導入した施策に対してどのような変動が起こるかを観察することが重要です。

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