取引先に暑中見舞いで心のこもったご挨拶を!ビジネスシーンでの例文もご紹介

日本にはお歳暮や年賀状など、季節に合わせて親しい人へ贈り物をして感謝の気持ちを伝えたり安否を気遣ったりする文化があります。良い一年が送れるように、お世話になったことへの感謝など、さまざまな意味合いをもって、プレゼントや手紙を送ります。

「暑中見舞い」もその一つです。メールやSNSの普及によって、はがきを送る機会が減りつつある昨今ですが、まだまだ暑中見舞いの風習は根強く残っています。特に企業同士のご挨拶として送る場合、礼儀やマナーを押さえておきたいところです。

暑中見舞いは梅雨明けから8月上旬の立秋までにかけて送られる手紙で、郵便はがきを用いることが一般的です。

時期が早すぎたり遅すぎたりしてしまうと「失礼」に当たる場合も。本記事では暑中見舞いの由来やマナー、例文などを解説します。

はがきなのになぜ「暑中見舞い」と呼ぶのか?

「暑中見舞い」という言葉からは、食べ物などをプレゼントするといった印象があります。しかし実際は「挨拶」のはがきを送るのみです。ではなぜ、はがきを送るだけなのに「見舞い」と呼ぶのでしょうか。

暑中見舞いはもともと、お盆の時期に里帰りした際、祖先に御供物をする風習が始まりといわれています。御供物をする際に、品とともに近況を報告することが、現在の「暑中見舞い」に繋がっているとされています。

「暑中見舞い」が現在のような形になったのは、江戸時代とされており、その頃にはお世話になっている人を中心に、夏の挨拶が交わされるようになりました。その際、遠方に住んでいて直接挨拶ができない人には、飛脚などを活用して贈り物や書状を届けていたのです。これが一般社会に浸透した結果、現在のような「暑中見舞い」の文化が生まれました。

つまり暑中見舞いはもともと贈り物を届ける文化であったものが、手紙によって相手の安否を気遣うようになった風習といえます。

ビジネスシーンの暑中見舞いでは、何をどのように書くべきか?

暑中見舞いに限らず何らかのはがきを送る際、日本には多くの作法(マナー)があります。挨拶一つとっても、時候の挨拶や結びの挨拶などがあり、マナーを守らずに暑中見舞いを送ると礼を失する場合もあります。

ビジネスシーンでは、暑中見舞いをメールで送るケースもありますが、はがきの場合と内容に大きな違いはありません。以下に基本的なマナーを解説するので、参考にしてください。

書き方

暑中見舞いはある程度書き方が決まっており、そのマナーに沿って書けばよいため、比較的手軽に作成できます。

まず表面に記載する内容は、宛先や名前、差出人についての情報など、通常のはがきと同様です。裏面には、以下4つの要素を含めた内容が記載されています。

  • 見舞いの挨拶(冒頭)
  • 時候の挨拶を含めた本文
  • 結びの挨拶
  • 日付

裏面の右端をスタートとして、1から順に記載していくのが、一般的な暑中見舞いの書き方です。

「見舞いの挨拶(冒頭)」というのは「暑中お見舞い申し上げます」といった一文のことで、最も大きく書くことがポイントです。このとき「ます」の後ろに「。(句点)」は付けません。これは日本文には本来句読点がなく、挨拶状は伝統的でフォーマルな形式に則るためです。

また「日付」についてですが、ここでは「◯月◯日」など、正確な日付までは記載しません。「令和◯年 盛夏」のように、年と季節さえ記載すれば十分です。

マナー

特にマナーが求められるのは「本文」です。本文はある程度自由に書くことができますが、何でも書いて良いというわけではありません。

本文についても、以下のように含めるのが望ましい要素があります。

  • 時候の挨拶
  • 相手を気遣う一文
  • 自身の近況に関する一文

「時候の挨拶」とは「暑さが厳しい〜」などから始まる、季節に合わせた挨拶のことです。

簡単な挨拶文を記載したのちに「相手を気遣う一文」を挿入します。

相手を気遣う一文とは、「いかがお過ごしでしょうか。」「(暑さを)いかがお凌ぎでしょうか。」など、相手の健康や生活を気遣うコメントのことです。この後に、日頃の感謝を伝える一文を添えてもよいでしょう。

そして「自身の近況に関する一文」を書きます。宛先がビジネスの相手なのかプライベートの相手なのかによって、この部分をどのような内容にするのかが変わります。前者ならば仕事の近況を、後者ならば健康状態や帰省の予定などプライベートな内容を書き添えても良いでしょう。

ビジネスシーンにおいて暑中見舞いを送る際は、以下のような要素を含めるとより親切です。

  • 夏季の営業期間
  • 夏季に行われる行事などの連絡事項

例文

見舞いの挨拶や日付などは、思い悩むことなくスラスラと書くことができるでしょう。しかし「本文」や「結びの挨拶」などは、実際に書くときになって、あれこれと頭を悩ませてしまう点です。

そこでビジネスシーンにおける「本文」と「結びの挨拶」にぴったりな例文をいくつか紹介します。例文をベースにしつつ、宛先や自身の近況によってアレンジを加えることで、オリジナリティもある心のこもった暑中見舞いに仕上がるでしょう。

<本文の例>

1.ようやく梅雨が明け、夏本番の季節となりました。貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。平素より格別のお引き立てを賜り、まことにありがとうございます。

  • 厳しい暑さが続いておりますが、皆さまお元気でいらっしゃいますでしょうか。日頃よりひとかたならぬご厚情を賜り、篤くお礼申し上げます。おかげさまをもちまして、弊社一同夏の日差しに負けることなく業務に邁進しております。
  • 日に日に暑さが増していますが、貴社におかれましてはお変わりございませんでしょうか。まだまだ厳しい気候が続くかと存じますが、皆さまの益々のご健勝をお祈り申し上げます。
    さて、まことに勝手ながら弊社では以下の期間を夏期休暇とする予定でございます。

1は「時候の挨拶・相手への気遣い・平素の御礼」といったスタンダードな構成、2はそれよりも親しげな関係性のややくだけた文体、3は暑中見舞いと併せて夏期休業期間のお知らせとするパターンです。

いずれも基本的には個人宛の暑中見舞いと変わりはありませんが、企業同士であるため相手方を「貴社」「皆さま」などとし、こちらを「弊社」「一同」などと複数形で捉えるのがポイントとなります。

したがって文中での話題も個人的な出来事より、業界やビジネスシーンで共有できるものを選ぶのがセオリーです。

<結びの挨拶>

  • 急な暑さによって体調を崩されぬよう、ご一同様なにとぞご自愛ください。
  • これからますます暑さが増すとの由、皆さまのご健康を心よりお祈りしております。
  • またお目にかかれる日を楽しみにしています。皆さまお身体に気をつけてお過ごしください。

結びの挨拶では再度相手のことを気遣ったり、その健康を願ったりする文章で締めくくり、自身の真心を伝えるようにするとよいでしょう。

このパターンでもやはり主語を複数形にすることで、企業同士という広い意味での書状という体裁が成り立ちます。

立秋を過ぎたら「残暑見舞い」を送る方法も

8月上旬の二十四節気、「立秋」を迎えると暦の上ではもう秋となります。そのため「暑中見舞い」では季節外れの挨拶となってしまうため、「暑中」ではなく「残暑」としてお見舞いを送ります。

残暑見舞いは「まだまだ続く暑さ」を見舞うハガキです。この時期は、いくら「暦上では秋」といっても、暑い日はまだまだ続くことでしょう。このことから、引き続き健康に気をつけてほしいといった旨を伝えるのが「残暑見舞い」なのです。

見舞いの挨拶は「残暑お見舞い申し上げます」と記載し、「立秋とは名ばかりの暑さが続きます」などの挨拶を含めた文章を送ります。

紙の暑中見舞いで、さわやかなご挨拶を

年賀状を送る人に比べて、暑中見舞いを送る人はかなり減っています。

企業においてもその傾向は同じですが、だからこそ気の利いた暑中見舞いを送ると、相手の印象に残りやすいといったメリットが得られます。

本記事の内容を参考に、丁寧な暑中見舞いで真心を相手に伝えてみてはかがでしょうか。

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