企業や店舗等にとっての挨拶状は、お客様へのお礼や自身の近況を伝えるのにとても有効なツールです。
挨拶状にはある程度決まった書き方がありますが、特に相手に対して失礼にあたらないよう独特のマナーに則ることが重要です。
この記事では、そんな挨拶状の書き方や目的別の例文についてご紹介します。
この記事のポイントまとめ
- 挨拶状はお客様への感謝や自身の近況を伝えるのに有効なツール
- 挨拶状は形式が決まっており、一定のルールを守る必要がある
- 正しいマナーを守りつつ、相手への思いが伝わるように工夫することが大切
挨拶状とは、あなたとお客様との潤滑剤
企業や店舗からの気持ちのこもった挨拶状は、お客様との関係を良好にする役割を果たします。
例えば、年賀状や暑中見舞い、寒中見舞いなど、年末年始をはじめとする季節のお便りも挨拶状の一種です。ビジネスシーンでは、会社の設立や社名変更、新社長就任などがあった際に送る案内状も挨拶状に含まれます。
また、取引先へのお礼状や詫び状、招待状などもあり、挨拶状はさまざまな場面で活用されています。昨今は電子メールでやりとりする機会が多いですが、改まったご挨拶をする際は伝統的な紙の挨拶状を送るのが礼にかなった作法といえるでしょう。
挨拶状には一定のルールやマナーがある
挨拶状の書き方には一定のルールやマナーがあります。相手に失礼な印象を与えないためにも、正しい書き方を理解しておく必要があります。
お客様に向けた一般的な挨拶状は以下の要素で構成されており、この順序で文章を書くのが基本です。
それぞれの意味や例文について、企業や店舗が出すケースを中心として次項から詳しく見ていきましょう。
1.「頭語」
2.「時候の挨拶」
3.「送る相手の繁栄を喜ぶ表現・感謝の言葉」
4.「本題」
5.「結びの挨拶」
6.「結語」
1.「頭語」・6.「結語」
挨拶状の順序としては最初と最後に記載するものですが、これらはワンセットのためこの項でまとめて解説します。
頭語と結語は、文章の冒頭と結びに書く挨拶の言葉です。ただし、季節の挨拶状やお見舞いなどの挨拶状には、頭語と結語は必要ありません。
頭語と結語は組み合わせが決まっており、「拝啓(頭語)」「敬具(結語)」のようにセットで使います。また、文書の種類に応じて適切な組み合わせが異なるのも特徴です。
「拝啓」とは「拝=おじぎをする」「啓=ひらく・申し上げる」の字義から、「つつしんで申し上げます」という気持ちを表しています。
また「敬具」は「敬=うやまう」「具=そろえる」ということから、「敬って手紙を締めくくります」といった意味となります。
頭語・結語には他にも様々なものがありますが組み合わせを誤るとマナー違反にあたるため、セットで使うように注意しましょう。挨拶状の種類に適した組み合わせは以下を参考にしてください。
文書の種類 | 頭語・結語 |
一般的な文書 | 拝啓・敬具 啓上・敬白 拝呈・拝具 |
目上の人に送る丁寧な手紙 | 謹啓・謹白 謹呈・謹言 敬上・敬具 |
緊急の内容を知らせる手紙 | 急啓・草々 急白・不一 急呈・怱々 |
2.「時候の挨拶」
時候の挨拶とは、季節の移り変わりや相手への気遣いを表す文章です。
その時点での季節感を表現し、相手の体調や近況に変わりがないか配慮の念を伝えるのが一般的な流れです。
漢語調と口語調の2パターンがあり、前者は企業向けのかしこまった挨拶状に適しています。後者は親しみやすい印象となるため、相手との関係性に合わせて使い分けましょう。
時候の挨拶には、季節ごとに決まったフレーズがあります。その年の気候なども考慮しながら、季節に合わせた表現を選ぶことが大切です。
季節 | 時候の挨拶の例(漢語調) |
1月 | 新春の候 厳冬の候 |
2月 | 立春の候 晩冬の候 |
3月 | 仲春の候 弥生の候 |
4月 | 春眠の候 桜花の候 |
5月 | 立夏の候 若葉の候 |
6月 | 初夏の候 紫陽花の候 |
7月 | 小暑の候 酷暑の候 |
8月 | 立秋の候 晩夏の候 |
9月 | 白露の候 秋桜の候 |
10月 | 寒露の候 秋冷の候 |
11月 | 立冬の候 晩秋の候 |
12月 | 大雪の候 師走の候 |
3.「送る相手の繁栄を喜ぶ表現・感謝の言葉」
頭語と時候の挨拶を書いたら、送る相手の繁栄を喜ぶ言葉を述べます。個人同士でも使う表現ですが、企業など集団間では特によく用いられる言い回しです。ただし、お見舞いのための挨拶状のように、喜びの言葉が適さない場合は省略するのがマナーです。
繁栄を喜ぶ慣用表現のあとに感謝の言葉を続けると、相手に丁寧な印象を与えられます。それぞれの例文を以下にまとめました。
【繁栄を喜ぶ慣用表現】
- 皆様におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます
- 貴社にはなお一層ご発展のこととお喜び申し上げます
【感謝の言葉】
- 平素は格別のご愛顧をいただき厚く御礼申し上げます
- 先日は身に余るお心配りを賜り心から感謝申し上げます
4.「本題」
頭語から感謝の言葉までを書き終えたら、挨拶状の本題に入りましょう。本題を述べる際は、接続詞を活用すると読みやすい文章に仕上がります。
例えば、「この度」や「さて」などの言葉から書き始めると、前後の流れが不自然になりません。補足説明する際は「なお」、結論を述べる際は「つきましては」など、接続詞を活用して話の流れがスムーズになるように工夫しましょう。
5.「結びの挨拶」
本題のあとは、挨拶状のまとめとして結びの挨拶を書きます。一般的なフレーズや季節ごとの言い回しがあるため、伝えたい内容に適した表現を使いましょう。いずれの場合でも、結びの挨拶は簡潔に書くことが大切です。
伝えたい内容 | 結びの挨拶の例 |
挨拶状の内容をまとめる表現 | 取り急ぎ書面にてご挨拶申し上げます。 |
関係の継続を願う表現 | 今後とも変わらぬご支援の程よろしくお願い申し上げます。 |
相手の健康を祈願する表現 | ご自愛のほどお祈り申し上げます。 |
返信をお願いする表現 | お忙しいところ恐縮ですがお返事賜りますようお願い申し上げます。 |
目的別に見る挨拶状のポイントとは
挨拶状を送る際は、形式や慣用表現などのマナーを守りつつ、目的に合わせて書き方を工夫することが大切です。例えば、新任や着任を知らせる挨拶状では、今後のお付き合いが良好になるように謙虚な気持ちを示しましょう。
お礼状を送る場合には心からの感謝の気持ちを伝えることが重要ですし、お詫び状ではお詫びの言葉を伝えるのはもちろん、トラブルの原因や解決策を含める必要があります。なおいずれの場合でも、挨拶状には句読点を使わないのがポイントです。
これは日本語文章にはもともと句読点が存在せず、「、」や「。」は明治期以降の学校教育で導入された記号であることに由来するとされています。
したがってお礼状・お詫び状をはじめ、慶弔の挨拶状や結婚式の招待状などのフォーマルな「書状」は、句読点を用いない日本文本来の形式を踏まえているといえるでしょう。
ただ、それだと少々読みにくくなるため、読点(「、」)を入れるべきところをスペースにするなどの工夫が必要となります。
挨拶状は目的によって書き方が異なるため、目的ごとに適切な表現を考えましょう。参考として、挨拶状の例文を目的別にご紹介します。
【新任・着任の挨拶】
拝啓 春眠の候 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます 平素は格別のご愛顧をいただき、心から感謝申し上げます さて 私こと ○○○○ このたび◯月◯日付をもちまして〇〇本社事業部本部長を命ぜられ無事着任いたしました 〇〇に在勤中は 公私ともに格別のご芳情に預かり誠に有難うございました 新任地におきましては新たな業務に精進致す所存でございますので なにとぞ倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます まずは略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます 敬 具 |
【お礼状(贈り物を頂いた場合)】
拝啓 若葉の候 ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます 平素は格別のご高配を賜り心から感謝申し上げます さて このたびは〇〇をご恵送くださり誠にありがとうございました 早速 皆で分けまして賞味させていただきます まずは略儀ながら書中をもちましてお礼かたがたご挨拶申し上げます 敬 具 |
【お詫び状(納期を遅延した場合)】
拝啓 紫陽花の候 ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます 平素は格別のご愛顧を賜り心から感謝申し上げます さて このたびご注文いただきました〇〇の出荷が遅れまして誠に申し訳ございません 予想以上の反響に生産が追いつかず、大変ご迷惑をおかけいたしました 本日ようやく出荷させていただきましたので お手元に届きましたら 商品のご確認をお願いいたします 今後とも弊社商品のご愛顧をお願い申し上げます まずは取り急ぎ商品発送のご報告とお詫びを申し上げます 敬 具 |
丁寧な文面で、お客様との関係を円滑に
繰り返しになりますが、挨拶状は相手へのお礼の気持ちや自身の近況などを伝えるための書状です。年末年始をはじめとする季節の挨拶や、贈り物を頂いた際のお礼、会社の社名を変更した際など、さまざまな場面で活用されます。
挨拶状には決まった形式があるため、目的に合わせて慣用表現を組み合わせましょう。ただし、ルールを守る必要がある一方で、何よりも大切なのはお客様へ心を込めて書くことです。
正しいマナーを押さえながら、相手への気持ちが伝わる挨拶状を送りましょう。
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