「~の候」って、何?今すぐ使える手紙のマナー「時候の挨拶」例文集

手紙を書く際、まず何から書けばいいのか困った経験はありませんか?
日本の手紙には、冒頭に「時候の挨拶」を書くというマナーがあります。これは、季節の移り変わりを表しながら相手の健康や状況を気遣うもので、最初にこの挨拶を述べることで、唐突感なくスムーズに本題へ移行できるのです。

ここでは、時候の挨拶としてよく目にする「~の候」を中心に、一年間の例文を紹介します。

この記事のポイントまとめ

・「~の候」とは、その季節に相手の様子をうかがう時候の挨拶の一種。

・目上の方やビジネス関係の方への手紙には漢語調の「~の候」を使用し、二十四節気にちなんだものにしておくと良い。

・二十四節気以外にもさまざまな「~の候」がある。

・親しい間柄の方へ手紙を書く場合には、口語調の時候の挨拶を用いても良い。

手紙の書き出しでよく見る「~の候」って、どんな意味?

「候」は「こう」と読み、その漢字には「様子をうかがう」「変化のきざしをうかがう」という意味があります。
「天候」「気候」という言葉に「候」が使われていますが、それぞれ「天気の様子をうかがう」「気候の様子をうかがう」ということを指します。そういうことから「〇〇の候」とは、「〇〇の季節に相手の様子をうかがう挨拶」だと考えればわかりやすいかもしれませんね。

24の「~の候」、その由来は中国発祥の「二十四節気」!

時候の挨拶には漢語調と口語調の2通りあり、「~の候」は漢語調の挨拶にあたります。
これは、おもに目上の方やビジネスでお付き合いのある方に手紙を送る際に使われるもので、フォーマルで格調高い印象を与えます。

この「~の候」を考えるのは一見難しそうですが、「二十四節気」に沿ったものにしておけばまず間違いはありません。二十四節気とは中国発祥の暦であり、一年を4つの季節に分け、その4つの季節をさらに約15日ごとに6つに分けて表したもので、天気予報でよく見聞きする「立春」や「立夏」などのことです。
ところが、まだ2月初旬なのに立春といったり、5月初旬なのに立夏といったり、実際の季節とズレがあることに気づきませんか?

二十四節気は紀元前の中国・黄河流域で生まれたものですが、現在の日本よりその当時の中国の方が季節の進み方が早いことから、少しズレが生じているのだそうです。
また二十四節気は、その年の暦の関係上1日ほど前後することがあるので、手紙を書く際にはその年の節気は何日になるのか前もって調べてから用いるようにしましょう。
ではここから、実際の二十四節気をご紹介していきます。

【春】

・立春(2/4頃) 暦の上では夏となり、春の気配が感じられる。

・雨水(2/19頃) 降雪が降雨に変わり、氷が溶けて水になる。

・啓蟄(3/5頃) 冬ごもりしていた地中の虫が地上に出てくる。

・春分(3/21頃) 太陽が真東から昇って真西に沈み、昼夜がほぼ等しくなる。

・清明(4/5頃) 草木が芽吹き、いきいきと清らかに見える。

・穀雨(4/20頃) 穀物を元気に成長させる、恵みの雨が降る。

【夏】

・立夏(5/5頃) 暦の上では夏となり、夏の気配が感じられる。

・小満(5/21頃) 草木が生い茂り、天地に満ち始める。

・芒種(6/6頃) 稲や麦など穂の出る作物の種をまく。

・夏至(6/21頃) 日の出から日の入りまでの時間がもっとも長くなる。

・小暑(7/7頃) 暑さ本番の少し前、暑気がだんだん強まっていく。

・大暑(7/23頃) 一年でもっとも暑さが厳しく感じられる。

【秋】

・立秋(8/8頃) 暦の上では秋となり、秋の気配が感じられる。

・処暑(8/23頃) 夏の暑さの峠を越して、気温が落ち着く。

・白露(9/8頃) 草花に朝露が宿り、白く光って見える。

・秋分(9/23頃) 太陽が真東から昇って真西に沈み、昼夜がほぼ等しくなる。

・寒露(10/8頃) 秋が深まり、草花に冷たい露が宿る。

・霜降(10/24頃) 朝晩の冷え込みが増し、霜が降りる。

【冬】

・立冬(11/7頃) 暦の上では冬となり、冬の気配が感じられる。

・小雪(11/22頃) 紅葉が落ち始め、小雪がちらつく。

・大雪(12/7頃) 本格的に冬が始まり、雪が降り積もる。

・冬至(12/21頃) 日の出から日の入りまでの時間がもっとも短くなる。

・小寒(1/5頃) 寒さ本番の少し前、寒気がだんだん強まっていく。

・大寒(1/21頃) 一年でもっとも寒さが厳しく感じられる。

漢語調の時候の挨拶は、これらの節気の後ろに「~の候」と付け足すだけで完成します。
例えば、2月4日頃から18日頃までの間に手紙を出す場合は「立春の候」、2月19日頃から3月4日頃までなら「雨水の候」というように、当てはめていけば良いのです。
現在の季節より少し早いかもしれませんが、二十四節気の名前が手紙の冒頭に出てくるだけで、季節の訪れを感じられるような気の利いた挨拶になりますよね。

二十四節気だけじゃない!他にもまだある「~の候」の例

また、漢語調の時候の挨拶は、二十四節気以外に次のような表現もあります。
二十四節気と同じように、季節の移り変わりが目に浮かぶ表現が多いですね。

◎1月

新春の候 初春の候 仲冬の候 寒風の候 寒中の候 厳冬の候 酷寒の候

◎2月

晩冬の候 晩寒の候 余寒の候 残雪の候 梅花の候 春寒の候 向春の候 

◎3月

早春の候 浅春の候 春雪の候 解氷の候 仲春の候 春色の候 春暖の候

◎4月

陽春の候 桜花の候 春風の候 麗春の候 晩春の候 春宵の候 清和の候 

◎5月

新緑の候 薫風の候 青葉の候 若葉の候 暮春の候 惜春の候 軽夏の候

◎6月

麦秋の候 初夏の候 新緑の候 入梅の候 梅雨の候 向暑の候 薄暑の候

◎7月

盛夏の候 仲夏の候 暑中の候 猛暑の候 炎暑の候 酷暑の候 驟雨の候

◎8月

季夏の候 晩夏の候 残暑の候 暮夏の候 残炎の候 納涼の候 秋暑の候

◎9月

初秋の候 清涼の候 新涼の候 爽秋の候 涼風の候 秋涼の候 秋色の候

◎10月

仲秋の候 秋晴の候 秋麗の候 清秋の候 秋涼の候 秋冷の候 紅葉の候

◎11月

暮秋の候 晩秋の候 落葉の候 向寒の候 初霜の候 初雁の候 霜秋の候

◎12月

初冬の候 師走の候 初雪の候 寒冷の候 霜氷の候 孟冬の候 歳末の候

さらに、「~の候」以外に「~のみぎり」という言い方もあります。「~の候」は改まった挨拶ではありますが、場合によっては少々堅苦しい印象を与えてしまうかもしれません。
挨拶の送り手が女性の場合は、優しく柔らかいイメージを表現するために昔の女性言葉である「みぎり」を用いるという方法もあります。「~の候」と同じく、「立春のみぎり」「雨水のみぎり」「啓蟄のみぎり」のように使います。

口語調でもOK!親しい方にはオリジナルの時候の挨拶も!

今まで述べてきた漢語調の「~の候」は、目上の方に対してやビジネスシーンで使われることが多い時候の挨拶ですが、親しい方への手紙にはくだけた口語調の挨拶も可能です。
これは、季節や風物詩などをテーマに、相手の気持ちを思いやりながら話し言葉で書くものであり、手紙の本題に入る前のちょっとした清涼剤のような役割を持つものです。
漢語調の挨拶だと紋切り型になってしまいがちですが、口語調になると親しみやすい印象を与えることができます。

特にルールはないので、季節を連想しながら自由に思いを綴って構いません。
ここからは、口語調の挨拶の例文をいくつか列挙しますので、オリジナリティあふれる挨拶をぜひ考えてみてください。

◎1~3月

・清々しい新年をお迎えのことと存じます。

・寒さ厳しい今日この頃いかがお過ごしでしょうか。

・梅のつぼみが綻んでまいりました。

・寒さの中にも柔らかな春の陽射しを感じます。

・うぐいすの声が聞こえてきそうな陽気です。

◎4~6月

・花冷えが続いておりますがお変わりございませんか。

・春風が心地よく舞う季節となりました。

・風薫るさわやかな季節がやってまいりました。

・新緑のみずみずしさに初夏の到来を感じます。

・色鮮やかな紫陽花が梅雨のひとときを和ませます。

◎7~9月

・こちらではやっと梅雨明けの報せが聞こえました。

・日増しに夏の暑さが厳しくなってまいりました。

・立秋とはいえ、まだまだ暑い日が続いております。

・朝晩幾分しのぎやすくなってまいりました。

・聞こえてくる虫の声が秋の入りを感じさせます。

◎10~12月

・さわやかな風が秋を運んでまいりました。

・紅く染まりつつある葉に秋の深まりを感じます。

・木枯らしが身に染みる季節となりました。

・おだやかな小春日和に心が安らぎます。

・早いもので師走を迎えることとなりました。

まとめ

二十四節気は、2016年に中国の申請によりユネスコ無形文化遺産に登録されたほか、2022年には北京冬季オリンピックの開会式のテーマにも採用されました。
季節を尊ぶ中国の文化を、日本では時候の挨拶として取り入れ、相手を思いやる慣習として受け継いできました。
現在、コミュニケーションの手段としてメールやSNSが主流になっていますが、大切な方へ特別な思いを伝える場合には手紙を送ってみませんか。

季節の移ろいに合わせた挨拶を冒頭に添えるだけで、ひと足早い季節の到来をお届けできるのはもちろん、相手への思いやりに彩りを与えることができるでしょう。 

⇒季節の挨拶にも便利なテンプレートが使えるはがきDM制作サービス「OCL」はこちら!

↓OCLの無料テンプレート例は画像をクリック!↓

一覧に戻る