自宅のポストにしばしば届けられる紙のDM(ダイレクトメール)。
手に取って文面に目を通したとき、人はどういった点に魅力を感じるのでしょうか。
本記事ではDMの「手紙」としての面にフォーカスし、受け手を魅了する“おもてなしの心” を込めた書き方についてご紹介したいと思います。
この記事のポイントまとめ
- DMの効果を引き出すには「特別感」と「有益感」を演出
- DMの書き方におけるコツは、受け取る人を具体的にイメージすること
- シンプルかつ具体的に書くことの重要性について
- 親しみを感じさせ、関心を引く挨拶文の書き方
- シチュエーション別、DM挨拶の例文(季節ごと・イベントごと・ターゲットごと)
DMで効果を発揮するための「書き方」とは?
DMは受け手である顧客に内容をよく読んでもらって、初めてその真価を発揮します。
それには送る側が、メッセージをしっかりと伝えられる工夫を施すことが必要となります。
以下にDMの効果的な書き方について、「構成」と「文章」の要素を取り上げて概観してみましょう。
構成のポイント2点
・ターゲットと目的を明確にする
ここでいうターゲットとは、DMを送る対象である顧客自身を指しています。
この顧客像が細かくはっきりしているほど、そこにDMを送る目的もおのずから明確なものとなります。
例えば、「自社商品のコスメを初めて購入してくれた20代女性」という対象には、その後の使用感や満足度をうかがうフォローDMを送るといった運用が想定できます。
そしてその目的としては、同商品のリピートを期待したり、他商品へのプロモーションでさらなる購買意欲を引き出したりといったことが挙げられるでしょう。
このようにターゲットを可能なかぎりピンポイントで絞り込み、各人に合わせた明確な目的を設定するのがDMの効果を引き出すポイントです。
・「特別感」と「有益感」で興味を引く
DMにおけるもう一段階先のポイントとして、受け取った人に「特別感」と「有益感」を印象付けることが挙げられます。
特別感とは「〇〇様だけに」といった個人への優待感のことであり、手紙であれば「親展」や「Your eyes only」といった言葉が添えられるようなイメージです。
DM自体は多数の顧客への大量送付を想定する場合もありますが、そこに受け手にとっての対個人性を感じさせることで「特別感」を演出できます。
また、「有益感」とは文字通りの「お得感」のことで、これは具体的な割引通知やクーポン券の添付などが相当します。
個人に宛てて「特別に」送られたDMに「お得な」情報が添えられることで、購買に向けた心理を促しつつ行動へのハードルを下げる効果が期待できます。
文章のポイント5点
・DMを読む「その人」をイメージして書く
DMが手紙である以上、受け手「その人」のことをイメージした文面づくりはもっとも基本的な配慮といえます。
前述のように、ターゲットの個人性(ペルソナ)が明確であるほどその効果が引き立つため、普段からの十分な顧客データの把握と分析が不可欠となります。
・親しみを感じられる文章にする
この場合の親しみとは、なれなれしい文体にするという意味ではありません。
DMとはいえ、大量生産の印刷物というイメージは避けられないため、事務的・機械的な文章で受け手の興味が離れないようにする配慮を指しています。
具体的には、個人に呼びかけるような雰囲気で「紙面での接客」を演出したり、購入した商品に不備がないかを気遣ったりするといったパターンが挙げられます。
このことで受け手の好感度を少しでもアップすることができれば、非常に大きな効果といえるでしょう。
・シンプル、具体的に
DMの文章で注意しなくてはならないのは、できる限り「シンプル」かつ「具体的」な記述にすることです。
なぜなら、必ずしもすべての受け手が文面を熟読してくれるわけではなく、さっと目を走らせて有益な情報だけを拾い読みすることも考えられるためです。
したがって、どんなにたくさん伝えたいことがあったとしても、一見して読む気を失くすような長文や、細かい文字がびっしりと並ぶような文字組みは避けたいところです。
シンプルであるということは読みやすさにつながり、具体的であることは受け手が最短で必要情報を得られるというメリットに直結します。
・直接的な売り込み文は避ける
DMでついついしたくなってしまうことに、商品やサービスのストレートな「売り込み」があります。
しかし、そうした文面を目にしたとき、急激に関心を失ったという経験がないでしょうか。
どんなにデザインが素晴らしく、どんなに美しい言葉が並んでいたとしても、それが直接の販促と分かった瞬間に興味を失うユーザーが多いという傾向が知られています。
DMはあくまでもユーザーファーストに徹し、過剰な売り込みはNGと考えた方がよいでしょう。
・手書きメッセージを添えると好感度アップ!
手紙の価値は、受け手を思って自ら筆を執る点にあるといっても過言ではありません。
時間と労力を割いて一文字ずつ紡がれた文は、メディアの発達した現代だからこそより希少性を感じさせますね。
DMでも究極的な位置付けは同じであるため、受け手個人に向けて手書きのメッセージを添えるのは、いわば「おもてなしの心」に通じる誠意の証ともいえます。
現代では肉筆の手紙を思わせるような「手書き風フォント」を用いたDMもありますが、印刷物であることは受け手にも分かってしまいます。
やはり直筆であることに意味のあるテクニックのため、短文のメッセージカードを別添するなどの工夫を凝らすのもおすすめです。
ただしそれにかかる時間と労力が膨大となるため、手書き文を印刷してフォーマットとし、顧客名だけを都度直筆するといった方法もみられます。
DMの効果的な挨拶文の書き方と例文
次に、DMに必要な「挨拶文」について、効果的な書き方と例文をご紹介します。
これは普通の手紙でも同様で、最初に挨拶を入れるのはマナーの上でも必要なこととされています。
しかし、DMではさらにマーケティングに則した効果も含まれている点に留意しましょう。
また、各用途に対しての挨拶文も、いくつかのシチュエーションごとに例を挙げて解説します。
挨拶文がもつ2つの役割
まず、DMにおける挨拶文がもつ役割2つをご紹介します。
単純ながらマーケティング上の重要な意義が込められているため、この部分でDMの成否が決まるといっても大げさではありません。
・顧客に親しみを感じさせる
DMの挨拶文が果たす最初の役割は、受け手(顧客)に親しみを感じてもらうことです。
繰り返しになりますが、この時に「親しみ」の意味を取り違えて、なれなれしい言葉を遣えばいいというわけではありません。
あくまでも礼節にかなった文体で、顧客に寄り添う気持ちを行間ににじませることを心がけましょう。
具体的には「〇〇さまにおかれましては」などと個人名で呼びかけたり、「先日お買い上げの〇〇はいかがでしたでしょうか」などと商品の使用感を案じたりするのも有効です。
売り手と買い手といっても人対人の関係であることに変わりはないため、こちらの誠意をしっかりと伝えることが「親しみ」に通じるといえるでしょう。
・DMを読んでもらうために関心を引く
もう一つDMの挨拶文が果たす重要な役割は、受け手の「関心を引く」ことです。
文章は縦書きなら右から左、横書きなら左から右へと冒頭から順に読むのが大原則。
その最初のコンタクトにおいて、まず受け手の目に触れる挨拶文の重要性は、言うまでもないことですね。
具体的には、目を引く短い文章を用いてその先の続きへと視線を促すことがネックとなります。
最初に大きく「〇〇様へのお知らせです」などと導入して時候の挨拶に入るなど、訴求ポイントを第一に印象付けるタイプのものが想定されます。
シチュエーション別・挨拶文の例文と解説12選
次にDM挨拶文の例を挙げて、その意義や効果を解説したいと思います。
挨拶文には冒頭に置く「はじめの挨拶」と、最後を締めくくる「結びの挨拶」とがあります。
・季節ごとのニーズに!春夏秋冬の挨拶文
普通の手紙でもみられるように、季節にそった挨拶文はもっとも基本的なフォーマットです。
四季がはっきりした日本では季節にまつわる言葉も数多く、伝統的な挨拶文として用いられてきました。
ここでは、文体を変えて春夏秋冬での例を解説します。
春(3~5月頃)の挨拶文
〈やわらかい文体の例〉
拝啓
一日ごとに温かさを増すこの頃、〇〇様におかれましてはお変わりございませんでしょうか。
~中略~
まだまだ朝夕肌寒く感じる日もありますので、お風邪など召されないようご自愛くださいませ。
敬具
・解説
季節をテーマにした「時候の挨拶」は、手紙や文書でもよく使われるものです。
必ずしも難しい言葉を使う必要はなく、日常で感じた気候の変化をつづるだけでも十分な挨拶となります。
ただし桜や紅葉、梅雨や雪など、地域ごとに時間差が生じるものには注意が必要です。
また、このような手紙の文例をイメージしたものでは、「結び」の挨拶で受け手(顧客)の健康や身辺への気遣いも忘れずに述べましょう。
夏(6~8月頃)の挨拶文
〈フォーマルな雰囲気の例〉
拝啓
盛夏の候、うだるような暑さが続きますが、〇〇様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
~中略~
連日の猛暑でお疲れがたまりやすい頃かと存じます。くれぐれも、御身大切にお過ごしください。
敬具
・解説
前項・春の挨拶文例がやわらかな「和語調」とすると、こちらは「漢語調」のフォーマルな雰囲気となっています。
「○○の候」は季節ごとに多くのバリエーションがありますが、あまり見慣れないような難しい言葉には一長一短があるでしょう。
基本的な構成は春の例文と同じですが、やや改まった態度を示したい時に効果を発揮する挨拶文のパターンです。
秋(9~11月頃)の挨拶文
〈くだけたタイプの例〉
「食欲の秋」の言葉通り、旬の味覚が目白押しのシーズンがやってまいりましたね!
~中略~
レジャーにも最適な季節となりましたので、お出かけの際にはぜひまた当店にもお立ち寄りください!
・解説
上記の例は相当にくだけたタイプで、リピーターや長期の顧客に親しみを込めたアプローチをするのに向いています。
もちろんどの季節でも応用が可能ですが、秋は特にグルメやレジャーといったアクティビティに対する需要が高まるため、購買意欲をそそるテンポのよい文面も有効です。
冬(12~2月頃)の挨拶文
〈年末の挨拶を兼ねた例〉
拝啓
早いもので今年も残すところあとわずか。〇〇様にはこの一年、まことにお世話になりましたことを心より御礼申し上げます。
~中略~
それでは、よいお年をお迎えくださいませ。
敬具
・解説
一口に冬といってもタイミングは様々ですが、年をまたぐ季節であるため何かと区切りのイベントが多くなります。
クリスマスやお歳暮の時期であり、歳末売り尽くしや新春初売りといったキャンペーンでも賑わいます。
したがってこの時期のDMでは、上記の例のように年末(または年始)のご挨拶を兼ねた販促活動がセオリーとなります。
コロナ禍での安否を気遣う挨拶文(災害時・非常事態下も同)
〈例〉
拝啓
連日のように新型コロナウイルス関連の報道が飛び交い、不安な日々が続いています。
当店にも多くのご心配の声をお寄せいただき、おかげさまで大きな励みとなっております。
~中略~
時短営業に伴い、少しでも多くの弊社製品をお届けしたいという思いから、通信販売の受付を開始いたしました。
本サービスが、○○様のお役に立てば幸いに存じます。
敬具
・解説
上記の例では昨今のコロナ禍を設定していますが、これは他の天災・事故などの非常事態下でも同様です。
顧客の安否を気遣う文面でもよいのですが、被害が明白である場合に「大丈夫ですか?」という文意は適切とはいえません。
そこで、自社への安否確認に応える体裁でお礼を述べるという文章技術が活用できます。
注意すべき点は、「非常事態を逆手にとって儲けようとしている」と誤解を受けないようにすることです。
あくまでも顧客の安否への配慮と、ユーザーファーストのサービスに対する情報発信を心がけましょう。
新規顧客の開拓を狙う挨拶文
〈例〉
今だからこそ、「紙」にこだわる印刷業者さまへ
WEBメディアが発達し、紙の印刷媒体は減少の一途をたどっています。
しかし、そんな時代だからこそ、紙のもつ温もりある風合いや現物としての存在感が再評価されています。
~~以下案内文~~
・解説
新規の顧客にDMを送るのは、いわば飛び込み営業をかけるようなもの。
したがって、最初の一文で興味をひけるかどうかが勝負になります。
効果的と考えられるのは、特定のターゲットがもつ悩み事や問題に対する「課題解決型」の導入文です。
必ずしもそこで課題に応えるわけではなく、受け手にソリューションを期待させることで続きの文面へと誘導する効果を狙います。
既存顧客に向けたリピート促進の挨拶文
〈例〉
いつも当店をご利用いただき、まことにありがとうございます!
先日お買い上げいただきました新登場のお味は、お気に召しましたでしょうか?
これからの季節、ご贈答に喜ばれるセット品も取り揃えております。
当店一同、〇〇様のまたのお越しをお待ちしております!
・解説
既存の顧客に、さらなるリピートを促すのはセオリーですね。
いわゆる「お得意様」と呼ばれる層で、親しみを込めてややくだけた文体を用いるのも効果的です。
すでにリピーターとなっている顧客には、定期購入の案内や割引のお知らせ、あるいは優待クーポンなどを添付するのもよいでしょう。
離脱を防ぎ、口コミなどの集客効果も期待できるため、win-winの関係を築くチャンスと捉えて文面を練りましょう。
休眠顧客にアプローチするための挨拶文
〈例〉
その節は、お買い上げありがとうございました。
〇〇様、たいへんご無沙汰しております。以前にご愛用いただいておりました弊社製品・〇〇につきまして、ぜひお知らせしたいことがありお便り差し上げました。
この度、従来シリーズよりさらに操作性の増した「〇〇」がリリースされ、ご好評をいただいております。
~中略~
より〇〇様のお役に立てることを願っておりますので、何かございましたらご遠慮なくお問い合わせくださいませ。
・解説
休眠顧客とは、以前に商品購入やサービス利用があったものの、しばらくコンタクトのないブランク層を指します。
いうなれば再び顧客になってくれる可能性の高いターゲットであるため、その掘り起こしを目的としたDMです。
ブランクが空いた理由には様々なものが考えられ、商品やサービスへの満足を得られなかったことも想定されます。
そこで上記のような挨拶文を用い、さらにユーザビリティが向上したことをアピールするのはとても有効だといえるでしょう。
また、以前の利用を店(企業)側が覚えていて顧客のその後を気遣う、という好印象も目指したいところです。
フォローDMの挨拶文
〈例〉
〇〇様、先日は弊社の〇〇をお買い上げいただき、まことにありがとうございました。
お使いになられたご感想は、いかがでしたしょうか。
〇日分のトライアル品でしたので、引き続きお試しになって効果のほどをご実感頂ければと願っております。
もし〇〇様のお気に召しましたら、お得な定期利用のご案内も可能です。
・解説
フォローDMとは、顧客に対してその後の「おうかがい」を立てるために送るものです。
特に定期利用を前提とした健康食品やサプリ、あるいはコスメなどを扱う業態で多くみられる手法です。
送付は一度だけとは限らず、使用感やその後の継続利用の是非などを尋ねるため、一定の間隔で複数回にわたって行う場合もあります。
この挨拶文にはアフターケアの意味合いも含まれ、顧客にリピーターとなってもらうことが目標といえるでしょう。
誕生日DMの挨拶文
〈例〉
Happy Birthday!
〇〇様、お誕生日おめでとうございます。
日頃のご愛顧への感謝を込めて、当店からバースデープレゼントをご用意しております。
次回のご来店時に、こちらのDMをご持参くださいませ。
・解説
顧客の誕生日にDMを送るのは、ポピュラーかつ効果的なマーケティング手法です。
いわゆる「節目需要」におけるパーソナライズの好例で、顧客であり続ければ年に一度確実に訪れる販促チャンスといえるでしょう。
DMの挨拶文では通り一遍の事務的な雰囲気にならないよう、しっかりと個人を祝福する文面を演出したいところです。
母の日、父の日の挨拶文
〈例〉
お母さん(お父さん)に、「いつもありがとう」の気持ちを!
5月〇〇日(6月〇〇日は)母の日(父の日)ですね。
ふだんは恥ずかしくてなかなか伝えられない、感謝の思いを伝えてみてはいかがでしょうか?
このDMと引き換えに、お母さま(お父さま)にご利用いただける優待クーポン券をご用意しております。
・解説
母の日や父の日も、前項のような節目需要を見込めるイベントです。
重要なのはDMを送る顧客が自身のためではなく、母や父といった「誰か」に向けて商品やサービスを利用する点にあります。
上記の文例では、顧客のご両親に利用してもらうクーポン券の添付を想定していますが、家族の誕生日やバレンタイ
ンデー・ホワイトデー、あるいは敬老の日などにも応用することができます。
○周年記念の挨拶文
〈例〉
祝・〇〇様 ご登録〇周年記念
〇〇様が弊社サービスにご登録頂いてから、〇月〇日で〇周年を迎えます。
この記念日を祝して、ささやかながら〇〇様へのプレゼントをご用意しました。
次回ご来店の際、このDMをご持参くださいませ。
心ばかりの品をお贈りいたします。
・解説
周年記念をお祝いするDMも、その有効性が知られています。
顧客の開店〇周年や、上場以来〇周年などのタイミングをつかむことで、「特別感」を印象付けることができます。
通常はこのように、顧客の事業に関係する周年が一般的ですが、上記文例ではDMを送る側と顧客との関係にフォーカスしてみました。
会員制を導入しているサービスなどにおいて「ご入会○○周年」といったイベントを創出することにより、顧客の離脱を防ぐ役割も果たします。
まとめ
以上、DMの効果的な書き方について、ポイントと例文をご紹介しました。
いずれにせよ、受け手にとっては一通の「手紙」であるため、しっかりと真心が伝わる文面を心がけましょう。
相手の立場と気持ちに思いをはせるのは、普通の手紙やメールでもまったく同じことですね。
DMでは優待のお知らせを添えることも多いため、これらの思いやりを込めた「おもてなしの心」をヒントに、届けたい方への文を紡いでみてはいかがでしょうか。
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