孔版印刷とは、穴のあいた版を使って上からインクを押し出すことで印刷する方式のことです。
本記事ではそんな孔版印刷についてのメリットとデメリット、用途もあわせてご紹介します。
この記事のポイントまとめ
- 孔版印刷とは、穴のあいた版を使って上からインクを押し出す印刷方法のこと
- 孔版印刷はインクが盛られた状態になるため耐光性に優れている
- 野外看板や車向けステッカー、ガラス、金属、陶磁器、プラスチックなど、さまざまなものに使われている
孔版印刷とは
孔版印刷では、インクの通るところと通らないところを設けた紙のような薄さの版材を用います。
印刷したい対象を下において上からインクを押し出し、インクの通り道となる孔だけに色を乗せることで転写します。
孔版印刷の種類・スクリーン(シルク)印刷
謄写版やスクリーン印刷などは孔版印刷を使っている印刷の種類です。スクリーン印刷は、シルク印刷やシルクスクリーン印刷とも呼ばれています。
スクリーン印刷は印刷物にインクが多く盛られた状態になり、耐光性に優れているというのがメリットのひとつです。
この特徴があるため、野外看板や車向けステッカーなど、長期間野外に設置するものによく使われています。
孔版印刷のメリットとデメリット
孔版印刷にはメリットもデメリットもあります。
印刷方法を検討する際は、メリットとデメリットの両面を理解したうえで、どれを使うのか判断すると良いでしょう。
ただし、同じ版式の印刷方法であっても、使用する機械によって特性が異なることに注意が必要です。
孔版印刷のメリット
孔版印刷のメリットは、以下のとおりです。
- インクが多く盛られた状態になること
- 耐光性に優れていること
- 小ロット向きであること
「耐光性」とは紫外線の影響による退色に耐える性質のことを指しており、蛍光灯や日光での色の褪せにくさとも言い換えられます。
孔版印刷は特にこの耐光性の高さが大きなメリットといえるでしょう。
孔版印刷のデメリット
孔版印刷のデメリットは、以下のとおりです。
- 印刷スピードが遅いこと
- 細かい印刷には適さないこと
- 塗りつぶし箇所の多い印刷物には適さないこと
- 印刷位置がズレてしまいやすいこと
孔版印刷で使うインクは水分が多いため、塗りつぶし箇所(ベタ)の多い印刷物には適しません。
ベタが多い印刷物では印刷の汚れが出てしまうケースもあるため注意が必要です。
孔版印刷の用途
最後に、孔版印刷の印刷方法がよく選ばれている印刷物にはどのようなものがあるのかについて、見てみましょう。
野外看板やステッカー
先述のとおり「看板」「ステッカー」「のぼり」などのように、屋外に設置することを前提としているものには孔版印刷がよく使われています。
特に野外看板や車向けステッカーなどを印刷する際は、多くのケースで孔版印刷が活用されています。
ガラス、金属、陶磁器
孔版印刷は屋外用途のものだけではなく、ガラスや金属、陶磁器、プラスチック、布、皮革など、さまざまな素材に印刷する際にも使われています。
版が薄く柔らかいという特徴を生かして、曲面にも印刷できるのが孔版の強みです。
ビンやプラスチックボトル、クレジットカード、Tシャツ、家電製品の表示、液晶、有機ELディスプレイ、ICチップ、燃料電池の電極等々、幅広い印刷用途に活用されています。
まとめ
孔版印刷といえば、1977~2008年まで販売されていた家庭用印刷器の「プリントゴッコ(理想科学工業株式会社)」を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これは孔版を用いた印刷方法の一種であるスクリーン印刷の簡易版で、主に年賀状作成用に全国的に普及しました。
またスクリーン印刷の技術を好んで制作に用いるアーティストもおり、ポップアートの旗手として知られるアメリカの「アンディ・ウォーホル」や、“前衛の女王”の異名をとった「草間彌生」などが挙げられます。