年賀状は大切なコミュニケーションツール。ビジネスシーンでの書き方や文例とは 

メールやチャットなどオンラインでの連絡手段が普及しても、お世話になった方に年賀状を送る習慣はまだまだ根強く残っています。企業や店舗にとっても、取引先の方に年賀状を送る機会は少なくありません。

本記事では年賀状とはそもそも何なのか、また、ビジネスシーンにおいて年賀状を書く時のコツについても解説します。文例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事のポイントまとめ

  • 年始に挨拶状を送る習慣は平安時代からあったとされる
  • 明治時代には官製はがきで年賀状を送ることが一般的になった
  • 役職や部署が変わっていないか確認してから年賀状を書くと失礼を回避できる
  • 元日に届くように早めに投函する

年賀状の起源は平安時代。明治時代から、官製はがきで送る現在のスタイルに

年始に挨拶状を送る習慣は、平安時代からあったとされています。
また、室町時代前期に書かれた『書物作法抄』では、年始に送る挨拶状はできれば正月の15日までに届くと良い、年末に送る場合は20日以降が好ましいといった内容が記されており、年末年始に挨拶状を送る習慣が定着していたと考えられるでしょう。

現在の年賀状のように親しい方やお世話になった方に年始にはがきを送るようになったのは、明治6年(1873年)以降です。

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明治6年には官製はがきが誕生し、これを用いてより気軽に年賀状を送れるようになりました。

明治32年(1899年)になると、現在のように年末の一定期間に投函すると元旦に届くという年賀郵便の特別取扱制度が始まります。ただし1人あたり10通以上とする差出制限がありました。

年賀状を送ることが一般化した後も、昭和24年(1949年)にはお年玉くじ付き年賀はがきの発行、昭和57年(1982年)には寄付金付きの年賀はがきは裏面に絵が入るなど、面白い試みやさまざまな変革が行われています。

時代は変わっても親しい人に年始の喜ばしい気持ちを伝えてきたのが、年賀状といえるでしょう。

【相手別】ビジネスシーンでの年賀状の文例

ビジネスシーンでの賀状(以下、ビジネス年賀状)は基本的なパターンは決まっているので、いくつか文例を覚えておくとスムーズに書けるようになるでしょう。文例をいくつか紹介します。

<取引先>

旧年中は格別のお引き立てを賜り御礼申し上げます

本年もご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます

<クライアント・顧客>

旧年中のご愛顧を心より感謝いたしますとともに皆さまのご繁栄をお祈り申し上げます

今年もよろしくお願い申し上げます

<上司>

旧年中はご厚情を賜りお礼申し上げます

本年もご指導のほどよろしくお願い申し上げます

<同僚>

昨年はたいへんお世話になりました

今年もお互いにとって良い年になりますように

<内定先>

本年から貴社でお世話になります

精一杯努力いたしますのでご指導のほどよろしくお願いします

特に親しい間柄のときは、近況やメッセージを一言付け加えても良いかもしれません。
また、ビジネス年賀状は、基本的には縦書きです。印刷でも問題ありませんが、手書きで一言加えると、より丁寧な印象になります。

ビジネス年賀状ならではの、気をつけるべきマナーやポイント

ビジネス年賀状の宛名は、以下のマナーを守った書き方を心掛けましょう。

  • 企業名や部署名は省略しない
  • 人名には「様」、企業名には「御中」
  • 人名と企業名をどちらも書く時には、「御中」は付けず人名に「様」のみ付ける
  • 弁護士などの普段から「先生」と呼んでいる方には「先生」を付ける
  • 番地などは漢数字を使う
  • 挨拶文には句読点を使わない

部署名や役職が間違っていると失礼にあたります。
最近会って名刺などで確認した場合を除き、一度連絡して変更がないかチェックしておくほうが良いでしょう。

また、年賀状の最初に使う賀詞(がし)は、重複してはいけません。以下によく用いられる賀詞を紹介します。
いずれも1枚の年賀状につき1回のみ使用しましょう。
なお、Happy New Yearなどの外国語での新年の挨拶も賀詞の一つです。外国語の新年の挨拶を使った場合や印刷されている場合は、他の賀詞と重ねて使わないようにしましょう。

  • 寿、賀、春、吉
  • 賀正、迎春、新春、初春、新年
  • 謹賀新年、謹賀新春、恭賀新年
  • 明けましておめでとうございます
  • 新年のお慶びを申し上げます
  • 謹んで新春のお慶びを申し上げます

なお、挨拶文にのみ句読点を用いないというのは、日本文の伝統に則ったフォーマルな形式に由来しています。

日本語文章には本来「、」や「。」はなく、明治以降の学校教育において生徒が読みやすいようにと導入された記号でした。

したがって、年賀状をはじめ慶弔の挨拶状や表彰状などでは句読点を用いないのが正式とされています。

また、縁起が悪いとされる忌み言葉(いみことば)も使ってはいけません。以下の言葉は使わないようにしましょう。

  • 終わる
  • 切る
  • 失う、失礼
  • 去る、去年
  • 綴じる
  • 倒れる
  • 絶える

例えば、「去年」には「去る」という忌み言葉が含まれているので、年賀状では使用を避けます。「昨年」や「旧年」などの言葉に言い換えるようにしましょう。

郵送に関するポイントとしては、官製はがきで年賀状を送る場合、切手を貼らずに投函することができます。
多くの枚数を出すときは、プリンターでまとめて印刷でき、なおかつ切手不要で投函できるインクジェット用の官製はがきが便利でしょう。

一方、私製はがきで年賀状を送る場合は、切手を貼らなくてはいけません。枚数が多いと手間がかかるので、料金別納で送ることも検討してみましょう。

料金別納とは10通以上をまとめて投函するときに利用できる制度で、料金別納表示を印字してもらうことで切手を貼る代わりにします。
また、事前に料金別納表示を私製はがきに印字してもらい、後から宛名や文面を書いて投函することも可能です。

ビジネス年賀状のマナーの中でも、特に重要なマナーが「元旦に届くように投函すること」です。
翌年の元旦に届くための投函期限日について調べ、遅れないように注意しましょう。

「紙の年賀状」が持つぬくもりを届けて、人間関係を円滑に!

近年では企業においても紙の年賀状を廃止する流れも見られますが、なぜ年賀状を出すのかという意味をあらためて考えてみることでその良さを再発見できるかもしれません。

紙という現物が持つぬくもりや、そこに込められた手間暇は気持ちを表すものとして長い伝統があります。
年賀状は良好な人間関係を築く上での大切なビジネスツールのひとつになるでしょう。

最近ではデジタル年賀状なども利用されてはいますが、普段のやり取りをメールやチャットでしている方であれば、新年ならではの改まった気分は表現しづらいと感じる面もあるかもしれません。
年に一度は送る側も送られる側も「紙の年賀状」の良さを再認識してみてはいかがでしょうか。

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